がん遺伝子治療について

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治療後、腫瘍が崩壊縮小した症例(腫瘍崩壊症候群)−2

※腫瘍崩壊症候群についてはこちら

乳がん患者さんの腫瘍崩壊した症例
に続き、ご紹介します。

この患者さんは73歳男性で、甲状腺がんが右腋窩リンパ節転移、多発肺転移、咽頭転移していました。
図1
左上にある大きな腫瘍の影が右腋窩の転移性のがん
※CT画面の上が腹側、下が背中側、左側が体の右側になります。

腸骨転移進行がん・末期がんの治療を専門とする医療機関から、もう治療法がないということで紹介を受けました。甲状腺にあるがんは手術により除去されていましたが、他の複数の臓器にがんが再発しており、特に右腋窩リンパ節の転移はバレーボール大くらいの大きさにまで発育し血管や神経を圧迫して右腕が腫れて自由に動かせない状態でした。肺転移についても、両肺の全領域に転移がんが散在しており数㎝~5㎝径の腫瘍が多数発生していました。

治療は、全身をターゲットとする点滴からの投与と、生活の質を下げている右腋窩腫瘍に対する直接注射とで実施しました。治療直後から右腕のむくみが取れるなど治療に反応したため、予定通り1-2週間の間隔で5回治療を実施したところ、口から壊れた腫瘍塊と思われる固形成分が何個も排出され、気道閉塞の恐れもあり入院管理となりました。その間に、バレーボール大ほどあった右腋窩の腫瘍が急速に縮まり殆ど腫れがない状態になったとのことでした。これは劇的に効いている、ということで我々もご家族も末期がんから回復する可能性があると大変期待しましたが、その後、入院中に残念ながら心停止となってしまいました。

もともと、重度の心不全があったため、水分の摂取を控えていた方だったのですが、治療薬が劇的に効いて腫瘍が崩壊した時に、脱水状態が重なると腎不全が誘発されることがあります。もともと心不全の方に腎不全がさらに発生すると心臓により大きな負担がかかり心停止に至る危険が増大します。

ご家族からは、「改めてこの治療の威力に驚きました。もう治療法がないという諦めの中で遺伝子治療に出会い望みを持つことが出来ました。本人も治療をやり尽くしたと感じていると思います。家族としても非常に感謝しています。」とのことでした。

治療法がないと宣告された末期がんであったとは言え、我々の遺伝子治療で救命することができなかったわけですから、その言葉を聞いて恐縮せざるを得ませんでした。ただし、経過からは明らかに末期がんでがん細胞数が相当に大量である状態でも遺伝子治療が劇的な効果を生む可能性があることを改めて認識しました。

当院のがん遺伝子治療は、激しい副作用がないことが利点でしたが、効きすぎることで本症例のように腫瘍崩壊症候群を発症させる可能性があります。
その発生率は統計上非常に低いようですが、脱水を回避し、予防薬を併用するなど、予防策を徹底していきたいと考えています。

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