がん遺伝子治療について

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がん遺伝子治療について

遺伝子治療とRNA干渉

先日、北青山Dクリニックの遺伝子治療を希望して受診された患者さんのご家族から「遺伝子治療」と「RNA干渉」の違いを尋ねられました。
当クリニックで実施しているCDC6 shRNA治療は、「遺伝子治療」の一つですが、一方で「RNA干渉」という先端医療技術を応用したものでもあります。遺伝子治療も様々なので、回答は一言ではすみません。しかし、時間的制約もあり簡単な説明しかできなかったため、今回はそのご質問に対し回答を記したいと思います。

そもそも「遺伝子」とはなんでしょう。私たちの体の細胞の数は60兆個に及びます。その細胞一つ一つに1個の核があり、その中に46本の染色体があります。染色体の中には、ひも状のらせん構造をしたDNAがあります。DNAは、①糖、②リン酸、③4種類の塩基(A:アデニン、G:グアニン、T:チミン、C:シトシン)で構成され、③の塩基の並び方によって遺伝情報が決まります。遺伝子はこの遺伝情報の一つの単位で、一個の細胞の核の中には約22,000個の遺伝子があります。

このそれぞれの遺伝子は、生命現象において様々な働きを持つ各種タンパク(酵素、ホルモンなどのメッセージ物質)を、どこで、どのくらい、どのように作成するかに関してコントロールしています。そして遺伝子の中のDNA塩基の並び方が、それを規定します。

実際にタンパクが作られる際には、DNA塩基の情報を対応するmRNA(メッセンジャーRNA)が読み取り、それに従ってtRNA(トランスファーRNA)が原料となるアミノ酸を運んできて、目的のタンパクが作られます。この「遺伝情報としてのDNA塩基のならびからタンパク(protein)が作られる一連の流れ」を「セントラルドグマ」と呼びます。

遺伝子治療やRNA干渉を語るには以上のことを最低踏まえなければいけません。そのことを基礎として以下に「遺伝子治療」と「RNA干渉」について概説します。

■遺伝子治療
遺伝子治療とは、「遺伝情報である遺伝子のDNA塩基の文字を自在に書き換えること」だと考えている方がいます。それはゲノム編集といってこれから開拓され得る技術ですが、遺伝子治療は、遺伝情報を変更するものではなく、いわゆる遺伝子組み換えとは異なります。 がん治療で行われる遺伝子治療は、大きく以下の二つに分けられます。
①不足している、もしくは突然変異により機能していない遺伝子(P53、P16 、PTENなどのがん抑制遺伝子)を外部から投与する。
②外部に取りだした患者さん自身の免疫細胞(T細胞)に遺伝子操作をして免疫力を増強したT細胞を再び体内にもどす。(CAR-T細胞療法など)
①に関する薬剤では、公的な認可を受けたものにGendecine(P53遺伝子製剤:中国)があります。②についても欧米で白血病などの治療に応用され出しています。

■RNA干渉
遺伝情報からタンパクが作られる一連の流れであるセントラルドグマ(前述)の過程のどこかを遮断することで、対応するタンパクの生成を止めてしまう技術の一つがRNA干渉です。RNA干渉では、ターゲットとなるタンパクの生成に対応するmRNAを壊して、そのタンパクが生成されないようにします。特に、CDC6 RNAi 療法では、「CDC6タンパク」というがんの無限増殖に強く関わるタンパクがターゲットです。CDC6タンパクが無くなれば、がんの無限増殖が止まり、がんが休眠状態になるか、がん細胞自体が自殺消滅する可能性があります。
RNA干渉の際に実際に働くのはターゲットのmRNAに対応する極めて小さなRNA(shRNAやsiRNA)です。それらを細胞の中に送るのに病原性を取り除いたウイルスを用います。これをウイルスベクター(ベクターとは運び屋という意味)と呼び、遺伝子治療においても基本的にこのウイルスベクターを使用することから、がん治療としてのRNA干渉はしばしば遺伝子治療の一部として表現されています。


北青山Dクリニックの遺伝子治療は、CDC6タンパクをターゲットにしたRNA干渉であるCDC6 RNAi を主軸としていますが、投与するウイルスベクターには、RNA干渉を引き起こすCDC6 shRNAに加えて、p53、p16、PTENなどのがん抑制遺伝子も搭載しています。

従来の「がん遺伝子治療」に、先端技術であるRNA干渉を付加することで、進行がんや難治がんに対する未踏の治療効果を得ることを意図した治療なのです。

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