スキルス胃がん・膵臓がんとCDC6shRNA治療

膵臓がん

 

  • はじめに

胃がん(スキルス胃がん除く)や大腸がんは早期で発見できれば100%に近い確率で根治治療が受けられます。また、全てのがんを対象としても6~7割は根治できる時代になっています。がんの根治率を高めるには、言うまでもなく早期発見を確実に行うことが肝心です。そのためには、ある程度の年齢(一般的には35歳くらい以上)になったら自覚症状がなくても定期的に(1年に1回が目安)がん検診を受けることが極めて大切とされています。

 ところが、膵臓がん(膵がん)は、定期検診をしっかり受けている方でも進行がんとして発見されることが多い極めて厄介ながんの一つです。現代医療の粋を尽くしても早期発見が困難なだけでなく、進行が極めて速いために、治療を施しても長期の生命予後が期待できないタチの悪い難治がんです。年齢構成を一定にそろえた年齢調整死亡率の年次推移を見ると、膵臓がんは横ばいかむしろ微増傾向にあります。これは年齢調整により死亡率が減少傾向にある他のがんと比べて明らかに異なります。医療の進化により多くのがんが制御されていく傾向にある中、膵臓がんはコントロールされる気配がありません。

 

 根治的な手術は外科手術(切除手術)ですが、膵臓は解剖的にも、胃、十二指腸、総胆管などに隣接しているため、膵臓がんの発生する場所によってはこれらの臓器を全てもしくは一部同時に切除する必要があります。ですので、膵臓がんの手術は消化器のがん手術の中でも最も難しい手術の一つになります。手術が困難なだけではなく、手術がたとえ成功したとしても再発率が極めて大きいのも特徴の一つで長期生存率が全てのがんの中で最低です。患者さんにとってはもちろん、治療を担当する医師にとっても、二重苦、三重苦いやそれ以上の厄介ながんと言えます。さらに、膵臓がんの患者さんで手術が可能となるのは全体の2割に過ぎず、手術後の再発率は7割に及びます。「なぜ神は膵臓という臓器を造ったのか・・・」と嘆く一流の消化器外科医のため息を以前耳にしたことがあります。

 このように治療が難しい膵臓がんに対して、さまざまな治療法が開発されています。しかし、その克服にはもう少し時間がかかりそうです。そのような中で、膵臓がんに対してでもCDC6 shRNA治療は極めて有力な治療法の一つになり得ると思われます。 極端に末期の状態にまで進んでいなければ、この治療により実際に症状が改善する例を複数経験しています。

  膵臓の位置とかたち: 膵臓は胃の裏側にあり横長の形  出典:「膵癌と言われたら」  

膵臓と周辺早期の関係 :膵臓から産生される消化液を運ぶ膵管は総胆管と合流して十二指腸に注ぎます。

 膵臓の右側1/3は膵頭部、左側1/3は膵尾部、その間1/3は膵体部と呼ばれます。

   出典:「膵癌と言われたら」

 

 

  1.  膵臓がんの基本

 

 膵臓は、胃の背側にある20㎝程の細長い臓器で、胃・十二指腸・胆管および脾臓に接しています。膵臓には膵管という細長い管が張り巡らされています。また、膵臓は二つの機能、すなわち、食物の消化を補助する膵液(消化液の一つ)を産生する外分泌機能と血糖値の調節などをするホルモン(インスリンなど)を産生する内分泌機能をもっています。

 膵臓がんは、5070歳の男性に多く、高齢になればなるほど発症数は増加します。膵臓がんの90%以上は、膵管の細胞から発生します。これは膵管がんと呼ばれ、膵臓がんとは通常この膵管がん(浸潤性膵管がん)のことを指します。他に、膵神経内分泌腫瘍、悪性膵管内乳頭粘液性腫瘍、悪性粘液嚢胞性腫瘍などの膵臓がんがあります。

 

 

  • 膵臓がんが発生する要因

 

 膵臓がんのみではなく殆ど全てのがんで、加齢は発生の危険因子になります。また、ヘビースモーカーは非喫煙者に比べて膵臓がんになる確率が23倍になります。遺伝的な要因で先天的に膵臓がんになりやすい場合もありますが、喫煙の他に糖尿病や飲酒などが原因となる慢性膵炎など後天的な要因が関与する場合が実は多いようです。親族に膵臓がんの方がいらっしゃって、糖尿病や肥満傾向があり、煙草を吸う人は要注意です。

 

 

  • 膵臓がんの予防

 

 膵臓がんの発生を抑える一次予防としてできる大切な生活習慣は、禁煙、節酒、そして、肥満にならないように適切な食習慣と適度な運動をするなど、健康管理上一般的に大切と言われているものに他なりません。糖尿病や慢性膵炎の方は、膵臓がんの発症リスクが大きいと言えますので、健常な方に比べて膵臓がんの発生を意識して定期検診をしっかり受けることが重要です。

 ただし、これをやれば確実に膵臓がんの発生を抑えられるという万全万能の方法は残念ながらありません。過度なストレスが膵臓がんに限らず多くのがんの原因の主因である可能性があることを考えれば、上記のことに加えて、日々の生活でストレスの管理に特に心掛けることが肝要かもしれません。

 私たちは、日常生活の管理の重要性に関する情報提供にとどまらず、点滴や栄養補助食品(サプリメント)で予防効果がある方法も積極的にご案内しています

 

 

  • 膵臓がんの症状

 

膵臓は、胃の背側の深部に位置しているため、がんが発生しても症状が出にくいことが特徴です。また、各種の検査を行っても発見が難しく早期発見が容易ではありません。

 膵臓がんが進行してくると、上腹部痛、体重減少、黄疸などの症状が見られます。上腹部痛は、膵臓がんが進行してくると比較的多く見られる症状で、食事とは無関係に発生し、背部に放散することが多く、激しい痛みを伴うこともあります。膵臓がんは、がんが進行した状態を示す悪液質(栄養不良による衰弱した状態)に陥りやすく体重減少が顕著に見られます。膵頭部の膵臓がんが大きくなると、胆汁を十二指腸に排泄する胆管を閉塞させて黄疸を来します。

 この様な症状は膵臓がんの発生部位によって異なる場合が多いです。例えば、膵頭部のがんは黄疸が典型的な症状ですが、膵体部や膵尾部のがんでは黄疸が見られることは少なく、腹痛や背部痛が主たる症状です。膵頭部がんによる黄疸は、膵体尾部がんの背部痛や腹痛よりは早期に発生すると言われています。しかし、黄疸を呈した時点で膵臓がんは周囲の組織に相応に浸潤していることが多く、手術で切除できたとしても、手術範囲が最大規模(体への負担が甚大)となってしまいます。その上、術後の再発率が極めて大きいので手術を実施する際にはその適応を十分検討する必要があります。

 

 

  • 膵臓がんの検査

 

 膵臓がんの診断に用いられる検査法は、血液検査、腹部超音波(エコー)検査、腹部CT検査、腹部MRIMRCP)検査、超音波内視鏡検査(EUS)、PET-CT検査などがあります。各種の検査の結果から総合的に診断を進めます(単一の検査で確定診断が得られる場合もありますが多くは複数の検査の重ね合わせが正確な診断には必要です)。

 

<血液検査>

 膵臓がんがあると膵管を流れる膵液の流れが悪くなり、膵液に含まれる酵素が血液中に逸脱するため、血液中の膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼなど)が上昇することがあります。また、膵臓がんでは糖尿病が悪化することが多いので血糖値の変動にも注意を要します。ビリルビンが高値で肝機能障害が確認された場合は、膵臓がんによって胆汁の流れが妨げられている可能性があります。

 体内にがんが発生することで通常は血液中に見られない物質が大量に発生することがあります。それらを腫瘍マーカーと呼びます。膵臓がんに対応する腫瘍マーカーとして、

CA19-9CEASpan-1Dupan-2などがあります。最近では、膵臓がんの早期発見を目的とした血中RNA検査なども考案されています。

 

<腹部超音波検査>

 この検査は膵臓がんに限らず腹腔内の腫瘍の同定には有益な方法です。人体に無害な超音波を当ててその反響画像によって状況を判断します。膵臓がんは通常黒っぽく見えます。膵臓がんがはっきり見えなくても、がんに閉鎖された部位よりも尾側の膵管が拡張している状況が捉えられることがあります。腹腔内の病変のスクリーニングに有用な検査です。

 

 

<腹部CT検査>

 CT検査は治療方針の決め手となる場合が多い極めて大切な検査です。造影剤を使用すると検査精度がより大きくなります。造影CT検査では、膵臓がんは黒っぽく写ります。癌自体がはっきり見えなくてもエコー検査と同様に膵管の拡張所見からがんが同定される場合もあります。また、CT検査では、肺、肝臓、周囲リンパ節へ転移の有無、周囲の臓器への浸潤の程度、腹水の有無なども判断できるため、膵臓がんの病期を判断する上で極めて重要な検査です。ただし、放射線の被爆がある程度避けられないのと、造影剤で稀にアレルギーが発生することがあります。

 

 膵臓がんCT冠状断

  

 膵臓がん CT水平断

 

 

 

<腹部MRIMRCP)検査>

 MRI検査は強い磁場の中に入って、体内の原子から発せられる電波信号を映像化し情報を得る検査です。被爆が無く、横断面、縦断面、斜断面など様々な断面で画像を描出できます。特に、造影剤を用いなくても膵管や胆管のみを描出するMRCP検査はMRI検査の際に同時に行うことができますが膵臓がんの発見には極めて役に立つ検査法です。以前はERCPという内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査が必須でしたが、これは検査負担が大きく、検査の合併症として膵炎や胆管炎が重症化するリスクがあるため、スクリーニングには適しませんでした。MRCPは負担がほとんどなく、ERCPとほぼ同様の情報が得られるため最近では膵臓がんの診断スクリーニングに好んで用いられるようになっています。

 

 MRCP検査:膵臓がんは写っていないが膵管の拡張がその存在を示唆する

 

 

 

<超音波内視鏡検査(EUS)>

 先端に超音波検査のプローブ(エコープローブ)が付いた内視鏡を口から入れて、膵臓に隣接する胃や十二指腸から膵臓のエコー検査を行うものです。腹部の皮膚にあてて行う一般のエコー検査の場合は、膵臓が腹部の奥深いところにあるため十分な画像情報が入手できない場合があります。特に内臓脂肪の多い方が膵臓の描出自体が困難です。しかし、EUSは、膵臓に非常に近い所からエコー検査が実施できるため、膵臓がんを捉えるだけでなく、門脈などの血管への浸潤度などの評価もできます。また、この検査中に針を刺して膵臓がんの細胞を取る「超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診」も実施できます。これにより、膵臓がんの確定診断やタイプの判別も可能となっています。ただし、通常のエコーやCT /MRI と比較すると患者さんにとって検査の負担がやや大きいのが難点です。

 

PET-CT検査>

 放射線を放出する検査薬を注射して、その薬が発する放射線を検出して画像化する検査です。検査薬は特にがん細胞に取り込まれるようにブドウ糖に似た放射性物質を結合させています。がんがブドウ糖を良く取り込む性質を利用して、がんの発生部位を同定します。一時、PET/CT検査は、全てのがんを発見できる万能の検査と考えられた時代がありましたが、胃・大腸・膀胱など描出しにくい部位もあるため、実際は、遠隔転移(肺、肝臓、骨などへの転移)の有無の判断や治療後の経過確認のために用いられます。

 

  • 膵臓がんの治療

 

 膵臓がんの主な治療法は、他のがんと同様に、「手術」「化学療法(抗がん剤治療)」「放射線治療」の三つの方法が主となります。病変の進行の度合い(病期)によって治療法が選択されます。膵臓がんにたとえなっても、早期に発見されて手術で完全に切除されることが望ましいのですが、何度か触れたように、膵臓がんは発見された時に既に病期が相当に進行して周囲の臓器に広がっていることが多く、完全に取り除くことが出来ないので手術が断念されるケースが非常に多いです。また、手術で取り除けると判断されても、腹部を切開して内部を確認してみたら、予想以上に転移が激しく手術を中止せざるを得ない場合もあります。そして、手術でしっかりと取り除けたと思われたのに、手術後間もなく再発を来してしまうこともあります。したがって、膵臓がんの治療は、手術ができない場合はもちろん、手術が出来ても化学療法が結果として主軸治療となることが非常に多いと言えます。

 化学療法の進歩も目覚ましく、新薬の開発は目を見張るものがありますが、残念ながら膵臓がんの治療後の生存率はいまだに極めて低いと言わざるを得ません。罹患率が大きいけれど早期で発見されれば治療成績が良い大腸がんと比較するとその差は歴然としています。

 

 

 この様に膵臓がんは最も対処が難しい代表的な難治がんです。さらに、手術の規模も消化器の手術の中では最大規模で、体力がない方や高齢の方は手術負担が大きいために、手術ではなく放射線治療に切り替えられることもあります。しかし、放射線治療は補助的治療の位置づけになる場合が殆どです。また、放射線治療は、痛みを取り除くために一時的な緩和治療として行われることもあります。

 この様にしてみると、膵臓がんがもし見つかってしまったら、ほぼ絶望的と考えるしかないと皆さんは思われるでしょう。確かに膵臓がんは何度も触れてきたように、難治がんの最たるもので、「患者泣かせ、医師泣かせ」の極めて厄介ながんの一つであることは疑いの余地がありません。しかし、膵臓がんは、仮に治療が奏功して少しでも延命していくことができると、他のがん以上にその後の延命期間が延長される可能性もあるのです。すなわち「サバイバー生存率」と言って、診断から一定年数生存している者(サバイバー)のその後の生存率を見ると、膵臓がんは、他のがん以上に生存率の改善幅が大きくなります。例えば、1年サバイバーの5年生存率は、診断から1年後に生存している者に限って算出したその後の5年生存率で(診断からは計6年後)、一般のがんでも、診断からの年数が経過するにつれてその時点での5年生存率は高くなっていきますが、元来、生存率が低い膵臓がんが、診断から5年後サバイバーの5年相対生存率は80%に迫ります。これは、膵臓がんは生き延びるのは難しいけれど、前向きに治療を進めてサバイバーの期間が長くなればなるほど生命予後が急激に良くなることを表しています。ただし、副作用に耐え抜いて化学療法をやみくもに受け続ければ良いという単純なものではありません。化学療法の毒性が蓄積されると、寿命を逆に縮めることになりかねないからです。 そこで、私たちは、膵臓がんに治療効果が期待でき、かつ大きな副作用や正常細胞への毒性がないCDC6 RNAi  ( CDC6shRNA治療 ) を、膵臓がんの方には早期から導入してもらうことをお勧めしています。現に、化学療法や放射線治療と並行してCDC6 shRNA治療を受けられた方は治療の相乗効果が非常に大きくなっていますし、症状の改善(食欲改善、痛みの緩和)なども得られています。標準治療をやりつくした方でも効果が期待できますが、可能であれば補完治療として標準治療にCDC6 shRNA治療を早期から付加することができれば更に治療効果が大きくなると考えています。ただし、この治療は、未承認治療であり保険が使えないため、治療を続けたくても負担が大きくて続けるのが困難になるケースがあります。2009年にこの治療を開始して以降、私たちは、1回あたりの投与量を増やして治療効果を更に高められよう、また、治療を継続するにあたっての負担がさらに軽減されるよう、製造法の改良に取り組んで薬剤単価を下げてきました。そして日々、治療効果を高めていくのと同時に治療負担を少しでも小さくしていくことに尽力しています。一人でも多くのがん患者さんが、CDC6 shRNA治療により救われることを願っています。

 

 

 

 

 

 

 

ページの先頭へ