がんの治療法

コラム がん治療の展望

東大医学部の同期で、「がんワクチン論争」を巻き起こし、日本のがん医療に大きな一石を投じた人物がいます。その内容は、がん治療の展望を考える上で、とても共鳴できるものでした。

その骨子は以下のようなものです。

  • 2010年11月、米国のメディケア(高齢者向け国営保険)諮問委員会が、デンドレオン社の前立腺がんワクチン「プロベンジ」を保険償還するよう推奨。
  • 米国はがんワクチンを含む医療分野を成長戦略の柱と認識。
  • 米国はワクチン治療効果判定の素案を発表(事実上の業界標準を制す)。
  • 米国に拠点を置く製薬会社が、がんワクチン開発では有利。
  • 医学的有効性を示せば、米国政府が保険償還する。

上記のような状況を受けて、製薬メーカーは米国での申請を優先するようになり、やがて米国を舞台に開発競争が活発化。その結果として、医薬品開発のノウハウが米国に蓄積することとなりました。
“官”がマーケットを整備し、競争を促進するというシナリオは、「出口戦略」をも見据えた巧みなプランだったといえるでしょう。
これと対照的なのが我が国です。

厚労省は、ワクチンの法定接種を増やすのではなく、国内のワクチンメーカーへの補助金給付を実施。その結果、市場原理が働かずに「ワクチン・ラグ」が生じるという事態を招きました。
このような国内状況のなか、医師や医療業界は、どのように進んでいくべきか?
私は、あらたながん治療の開発と普及には、以下のことが重要だと考えています。

<基礎から臨床への橋渡し研究>

あらたながん治療の開発・普及を進めるには、基礎から臨床への橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)を、質・量とも高いレベルで行う必要があります。また、そのような研究を可能にするには、学閥にとらわれない医師・医療機関のネットワークの構築が欠かせません。

<世界で通用する個人・集団>

がん治療の開発・普及は、国内だけの話ではありません。今世界中の研究者との情報交換や共同研究、国際的な医学誌への成果発表など、世界をフィールドにした積極的な活動が望まれます。

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