がんの治療法

あらたな治療法「遺伝子治療」

治療に有効な遺伝子を外部から体内に送達して、病的な状態の改善を目指す、それが「遺伝子治療」です。 治療に用いる遺伝子は、対象となる疾患によって異なります。

<遺伝子治療の例>
疾患治療形態
ADA欠損症先天的に不足している遺伝子を補充
がんがんを殺すタンパク質を生産する遺伝子の投与
がん、AIDS疾患の原因遺伝子の働きを抑える人工遺伝子の投与
閉塞性動脈硬化症、 狭心症、心筋梗塞血管の新生を促す遺伝子を投与

「がん遺伝子治療」の狙い

がんに対する遺伝子治療は、がんの6種類の特性をターゲットにして設計されることが望ましいとされています。

<がんの特性>
(1)自律的増殖能力
(2)無限増殖
(3)血管新生
(4)細胞死回避
(5)増殖停止命令回避
(6)組織浸潤性、転移能

たとえば、既存のがん遺伝子治療を超えるものとして期待される「CDC6shRNA治療」は、6つの特性のうち、(2)(4)(5)をターゲットにして設計された治療法です。 無限に増殖して正常細胞を蝕む細胞を「自殺させる」もしくは「増殖を停止し、老化させる」ことを目指しています。

「がん遺伝子治療」に求められる条件

がん治療の救世主として期待される「がん遺伝子治療」。 その開発にあたっては、さまざまな条件が求められています。
  • がん細胞のみが持つ物質をターゲットとしていること
  • その物質はがん細胞の生命維持に必須のものであること
  • 治療での分子生物学的反応は、がん細胞にのみ発生し、正常細胞には何ら影響がないこと
  • がん細胞に対応する生理活性物質が、がん細胞数に対して数的に圧倒的に多数であること

遺伝子治療薬の開発状況

遺伝子治療製剤の歴史
薬品名 疾患 ベクター 導入遺伝子
2002 中国 Gendicine 頭頚部がん アデノウイルス P53
2006 Rexin G 固形がん レトロウイルス Cyclin G1
2006 中国 Oncoline がん 腫瘍溶解性アデノウイルス
2011 Neovasculgen 末梢血管疾患 プラスミド VEGF
2012 EU(EMA)初 オランダ Glybera   家族性リポ蛋白質リパーゼ欠損症 AAVウイルス LPL S447Xバリアント 1×10^12genome copies/kg
2015 FDA初 T-vec IMLYGIC メラノーマ 腫瘍溶解性ヘルペスウイルス GM-CSF
EMA 申請中 Strimvelis ADA欠損症 レトロウイルス アデノシンデアミナーゼ
EMA 申請中 LentiGlobin βサラセミア レンチウイルス beta-globin
2016 FDA申請予定 SPK-RPE65(PhaseⅢ) レーバー先天性黒内障 AAV2ウイルス RPE65

日本での開発状況
日本ではまだ遺伝子治療製剤として承認された医薬品はなく、臨床研究や治験を進めている状況です。 遺伝子治療の安全性や有効性の評価基準が定まっていないことや倫理的な観点から、世界には後れを取っているといえます。 上記の外国において承認された遺伝子治療製剤も、日本ではあくまで未承認薬としての位置づけです。 しかし、すでに臨床試験の後期を迎えた医薬品も登場しており、近い将来、日本初の遺伝子治療薬が市場に投入されると期待されています。

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