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hTERT

真核細胞の染色体は直線状であり、その端に「テロメア」と呼ばれる配列があります。 テロメアは細胞が分裂するたびに短くなっていきます。テロメアがある程度まで短くなると、細胞分裂が止まり、そのまま細胞老化という状態になります。

しかし、「テロメラーゼ」という酵素が働くと、テロメアが伸長するため、細胞の増殖は止まることがありません。 テロメラーゼは、正常な細胞では卵巣や精巣などの生殖細胞に存在しており、そのおかげで子孫に長いテロメアを引き継ぐことができるようになっています。

また、がん細胞でもテロメラーゼの活性が認められており、がんの無限増殖の一因となっています。 テロメラーゼを構成する物質の中には、細胞分裂の速度をコントロールする「ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase)」というものがあり、「hTERT」と呼ばれています。
hTERTプロモーターは、テロメラーゼ活性が上昇しているがん細胞で特異的に働くという性質を持ち、「CDC6shRNA治療」は、この性質を活用し、がん細胞のみで治療遺伝子が発現するように設計されています。

テロメラーゼに関する補足事項として、それを利用して疾患の治療を考える医師もいます。例えば、ウエルナー症候群、ブルーム症候群、ナイミーヘン症候群、毛細血管拡張性運動失調症など、遺伝的な要因による早老症などに対して、テロメラーゼが利用できないかというのです。というのも、これらの早老症はいずれもテロメアの短縮が関連していると報告されており、その研究も進められています。テロメラーゼ活性を高めることで、テロメアが再延長すると、早老症の治療に繋がる、ひいては不老長寿が実現する、ということを真剣に考える医師達がいるのです。しかし、テロメラーゼの活性化により、細胞老化防止の可能性だけではなく、正常細胞のがん化が誘発されてそれにより個体寿命を短縮する可能性も否定できないため、不老長寿をの実現を目指す治療応用に関しては否定的な見解も少なくありません。

CDC6shRNA治療においては、テロメラーゼやhTERTが直接の治療対象というわけではありません。目的としたCDC6RNA干渉を、“がん細胞でのみ発生させる ための補助的手法として応用利用しているわけです。

このように、正常細胞には影響せずに、治療対象となるがん細胞にのみ働きかけることを、オフターゲットと呼び、CDC6shRNA治療はそのオフターゲット効果を要する安全な治療であると考えられます。

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