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RNA干渉

タンパク質の設計図「遺伝子」と実行役「RNA

生命体にとってもっとも重要な物質の一つは「タンパク質」であると言えます。 タンパク質は、コラーゲン・筋肉・酵素・ホルモン・抗体など、生体を形成する部品であったり、生命現象を調節する物質そのものであったりします。生命体が生命活動を安定した形で維持するためには、いつ・どこで・どの種類の・どのくらいの量のタンパク質が作られるべきか、厳密に制御されなければなりません。 その情報が書き込まれている領域が「遺伝子」です。

遺伝子の構成要素 遺伝子はDNAにより構成されています。DNAは4種類の塩基、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)を有し、それぞれが文字の役割を持っており、その並び方により様々な情報が表現されます。つまり、遺伝子においてはそれを構成する4つの塩基AGCTの並び方によってタンパク質合成の情報が示されているのです。

遺伝子に書き込まれている情報を読み取ったり、タンパク質合成の原料であるアミノ酸を運んできたり、実際にタンパク質合成を進めていくのが「RNA」です。RNAはその挙動や構造により5種類以上に分類されますが、その中でも「mRNA(メッセンジャーRNA)」は、もっとも重要なものとされています。 mRNA は、遺伝子DNAの情報をコピーして、タンパク質が合成される場所へと伝令する役割を持っています。タンパク質合成の場であるリボソームでは、その伝令をもとにして原料となるアミノ酸が集められ、目的のタンパク質が合成されます。

特定のタンパク質の合成を阻害する現象「RNA干渉」

ヒト細胞では数万種類のタンパク質が生命の営みを支えています。 ところがそのすべてが常に必要なわけではなく、場合によっては人間にとって害となるような働きをしてしまうタンパク質もあります。 そんな時は、RNAによってそのタンパク質を狙って合成させないようにすることができます。 そして、RNAがタンパク質の合成を阻害する一連の流れの中に「RNA干渉(RNAi)」と呼ばれる現象があります。 ※この現象を発見した科学者に対して、2006年にノーベル医学生理学賞が贈られました。 RNA干渉によって、ターゲットとなるタンパク質の合成に関与するmRNAを切断・破壊します。mRNAが破壊されることにより、タンパク質の合成に必要な情報が伝達されなくなり、タンパク質の合成が止まるのです。 このように、時にはタンパク質の合成を抑えて、タンパク質全体をバランシングすることは生命現象の安定と維持に重要です。

RNA干渉を応用したがん治療「CDC6shRNA治療」

特定のタンパク質にかかわるmRNAすべてを切断して消失させてしまうと、そのタンパク質は合成されなくなります。 タンパク質には寿命があるため、あらたにタンパク質が合成されて補充されないと、そのタンパク質はいずれ完全になくなってしまいます。この考え方をがん治療に応用したのがCDC6shRNA治療です すなわち、がんの持つ性質である「無限増殖」や「自然死の回避」などに深く関わるCDC6タンパクをターゲットにしてRNA干渉を行えば、がん細胞の有害な性質が消去されて、正常細胞の性質が蘇るのではないかと考えたのです。CDC6タンパクが完全に消去されれば、無限増殖が止まり、みずからを無用な細胞と見なして自然に死滅して行くはずだ・・・と。 この治療の柱は、CDC6shRNAをがん細胞へ送り込むことにあります。

  1. CDC6shRNAをがん細胞に送り込む
  2. CDC6shRNAによって、CDC6タンパクの合成に関わるmRNAが切断される(RNA干渉)
  3. CDC6タンパクが合成されなくなる
  4. 無限増殖が止まり、やがてがん細胞が死を迎える
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